神さま、わたしを食べてください

神さまに食べられるその日を夢みて

おじさんがくれたもの。

おじいちゃんとおばあちゃん、お母さんとおじさん(お母さんの弟)、それから私とで、巣鴨のお寺さんにお墓参りへ行きました。おじいちゃんのお友だちがいるところ。

親戚でもなんでもないけれど、おじいちゃんのおうちに遊びにくるこのおじさんを私たちはすきだった。

 

本がすきで、出先ではいつもわきのしたに本を挟んでいたおじさん。

 

買い物に行けば、「本屋行ってくるね」とふらっといなくなってしまう。そのうしろをこっそりついていって、欲しい本の前でじっとしていると、おじさんはそれを買ってくれた、何冊でも。

 

「ゆりちゃん、本は読んだほうがいいよ」とよく言っていた。普段はとても静かなひとだったけれど、それだけは何回も何回も言っていた。

 

小学生だった私の休日の楽しみといえば、お父さんに隣町の図書館へ連れて行ってもらうこと。ランドセルの中にはいつも本を忍ばせている子どもだった。

私の本好きは間違いなくおじさんの存在があったから。

 

おじさんは入手困難な本も次の日にはどこからか探して買ってきてくれた。

 

舟和の芋羊羹、梅園のあんみつ、今半の牛肉、生ハムの美味しさを教えてくれたのもおじさんだった。おじさんは一切食べないそれらをお土産に、ふらっとおじいちゃんの家に遊びにくるのだった。

 

土手沿いを、まだ小さい男の子が自転車をまたぐその横で、母親はキックボードをこいでいる姿を車中からみた。陽のひかりがその親子に向かって降り注いでいた。

今日一番、私が見たかったものはこれだと思った。